5月7日 申し入れ書

抗議申入書。5月7日付けで以下の大臣、長官、局長あてに申し入れ書を提出しました。

抗議申入書.PDF


法務大臣 森まさこ 殿
法務省出入国管理庁長官 佐々木聖子 殿
東京出入国在留管理局長 福山 宏 殿

抗議申入書

 1)新型コロナウイルス感染症の拡大が、深刻な事態を生み出している中、東京出入国在留管理局の収容施設、東日本入国管理センター(牛久入管)をはじめ全国の入管施設には1000人を超える被収容者が、期限のない長期収容からのストレスに加え、コロナ感染の恐怖におびえながら命の危険にさらされ続けています。一刻も早く、すべての被収容者を解放してください。

 2)外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会は4月25日、東京労働組合交流センターの労働者をはじめとする日本の労働者に呼びかけ、このコロナ情勢のもと、「ずべての被収容者を今すぐ自由に! 命を守れ!」と訴えて、東京入管包囲デモを闘いました。この行動は同時に、被収容者への激励行動でもありました。
 しかし、この日3時ころから、東京入管の収容施設で仮放免不許可に抗議していた女性たちが、午後5時すぎ、入管職員による集団暴行を受け、懲罰房に隔離されたというのです。女性たちの抗議行動は、声も出さず、紙やTシャツに「外に出して」などと書いて訴えるサイレントデモでした。ブロックのほぼ全員がこの行動に参加していたことからも、「外に出して」という意思表示が被収容者たちの切実な思いだったことがわかります。彼女たちは「フリータイム」終了後も帰室を拒否し続けました。この女性たちを力づくで居室に戻し、鍵をかけようと50人もの職員(女性職員だけではなく、男性職員も!)を動員し、襲いかかったのです。絶対に許すことはできません。
 彼女たちがどうなったのか、この報復的な懲罰について経過を明らかにしてください。

 3)4月7日に安倍政権が「緊急事態宣言」を発令した後、森まさこ法務大臣は、「今般の新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言を受けての対策として、仮放免を柔軟に活用する」(4月14日)。「仮放免等に関しては,今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の実態を踏まえて、柔軟に活用することを指示している」(17日)と表明しました。そして実際に多くの被収容者が仮放免されました。しかし同時に、難民申請者や日本に家族がいるなど、さまざまな事情を抱え、長期収容されながらも帰国できない人々に対し、4月に入ってからも仮放免不許可が出ています。
 この人々を入管はことさらに「送還忌避者」と規定し、「一刻も早い送還を期すべき」「それが長期収容問題を解決する道だ」と強弁していますが、政治的迫害から逃れて日本にたどり着いた難民であり、さまざまな事情で日本にしか居場所のない人々です。日本で生まれ育った子どもたちをどこに追放するというのでしょうか。
 諸外国と比較すると日本の難民認定率の異常な低さが際立っています。昨年は難民申請者10375人に対し、難民と認められたのはわずか44人、「人道的配慮」で在留が認められた37人を合わせても81人に過ぎません。この日本の人権レベルが国際的にも批判の的になっています。
 追放ありきの法務省・入管庁の姿勢をこそ正さなければなりません。全国17収容施設の被収容者910人(4月30日現在)と約2500人の仮放免者に、正規の在留資格を出してください。

4)さらに4月27日からは、全国の入管施設での家族・友人面会が禁止されました。23日に東日本入管センターに出入国在留管理庁の佐々木聖子長官一行が視察した直後の決定です。森法相は、4月27日から当分の間、弁護士と領事館の職員以外との面会を原則として実施しないことを指示したのは出入国在留管理庁だと明らかにしました。さらに森法相は、「希望がある場合には、面会に代わる電話通話の機会を、一定の時間・回数の範囲内で提供することについても入管庁は指示している」と言いましたが、東日本入管センターでは、この電話通話は週2回,1回につき10分以内という非常に厳しい制限があり、入管職員の立会いもあるという実態です。
 ここまで入管施設が閉鎖された空間であり、コロナウイルス感染の危険性があると判断しているのなら、この危険な施設からの解放するこそが、被収容者のみならず、入管職員の命を守ることではないでしょうか。

5)4月30日、宮崎法務大臣政務官が座長を務める入管施設感染防止タスクフォースにおいて策定された「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」は、翌5月1日付で、すべての出入国在留管理部署に発出されたと、森法務大臣が記者会見で明らかにしています。森法務大臣は、出入国在留管理庁に対し、このマニュアルを全職員に周知した上で、これに基づく適切な感染症対策をとるよう指示をしたと発言しています。
 全文が公表されたマニュアルを見ると、「入管収容施設は、閉鎖空間であり、ひとたび新型コロナウイルス感染症の感染が発生した場合、感染拡大の危険性が特に大きいことから、職員及び被収容者の感染防止を徹底して行う必要がある」(第4編 各論・入管収容施設関連 、1 本編特有の留意点)と明記されています。「2 感染防止のための基礎的対処及び感染者の発生の場合に備えた準備等」では、「(3)密集等の回避及び収容余力の確保」には、方策として「仮放免を積極的に活用すること」とも明記されています。
 また、法務省が法令で定めた被収容者処遇規則17条には、非常災害時に所長権限で被収容者を「一時解放できる」とあります。あらゆる方策をもって、「閉鎖空間」から解放すべきです。

6) 東京オリンピックの治安対策の名のもとに、仮放免が激減、在留特別許可も狭き門となりました。収容期間6カ月以上が「長期」とされていましたが、今では2年、3年、4年、5年も超える長期収容が常態化しました。昨春以降、牛久をはじめ全国で被収容者が仮放免を求めるハンガーストライキに入り、一時は100人を超える広がりとなりました。その渦中、大村入国管理センターで仮放免を求めてハンストを行ったナイジェリア人男性が飢餓死するという事態まで引き起こされました。
 日本の入管収容施設ではこれまでも多くの外国人が適切な医療を受けられず、医療放置・医療過誤により命を奪われてきました。絶望に追い込まれ自ら命を絶つという選択も、入管行政が強いた殺人と言えるのではないでしょうか。これを繰り返してはなりません。
 コロナ事態によって、この社会の矛盾が暴かれています。戦後、在日外国人を治安管理の対象とし差別・抑圧、人権侵害を思いのままにしてきた入管行政のあり方も、その実態が暴かれ、労働者民衆の怒りの的となっています。
 被収容者の命を最優先し、今すぐ、すべての被収容者を解放するよう強く申し入れます。

2020年5月7日
外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会
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